今回だけない。

度重なる会社による不当労働行為。

 横浜自動車学校では、今回の争議だけでなく過去にも争議が起こっています。2007年1月に現在の石渡社長が取締役に就任しましたが、以降、それまで正常であった労使関係が悪化し、労使紛争にまで発展してしまいました。

2010年の春闘における不当労働行為

 2010年の春闘で一時金の要求をする労働組合に対して、会社は低額回答を押しつけてきたうえ、労働組合との交渉では一切の資料などを示さず、形式的な回答を繰り返すか押し黙るだけで不誠実な対応に終始しました。これに対し労働組合は果敢に闘いをすすめるも、会社は態度を改めないことから、労働組合はストライキで抗議の意思を示し要求することとしました。

 これに対し会社は、労働組合の要求や抗議に対し真摯に受け止めるどころか、不当労働行為を重ね対抗してきたのです。

 

●「会社を解散する」と労働組合を威嚇

 組合員の切実な要求を掲げ、ストライキで会社の不誠実な対応を正そうという労働組合に対し、会社は職員に向けて、労働組合がストライキをおこなえば会社が解散する可能性がある旨の文書を提示したのです。

 これは、労働組合に対しストライキを起こせば会社が解散し、職場がなくなるかもしれないと組合員に心理的な不安を与え、動揺を誘うものです。労働組合がストライキをおこなうことを躊躇させる目的があることは明白です。

 このような威嚇ともいえる行為は、憲法でも保障された労働組合のストライキ権に干渉し、労働組合の活動に不当に介入する不当労働行為です。

 

●会社が、あえて「労働組合の支部長の個人名」で教習生に向け

ストライキが実施された際の予約変更をお願いする文書を提示

 会社は労働組合がストライキをおこなえば、当日の教習がほとんどできなくなる旨の文書を、労働組合の支部長の個人名で掲示し、あたかも労働組合および支部長がお願いしていると受け取れるような文書を掲示しました。もちろん、支部長本人はもとより労働組合として確認した文書などではなく、会社が勝手に労働組合の支部長の個人名を使用したのです。

 これも労働組合のストライキを妨害し委縮させることは明らかであり、上記と同様に不当労働行為です。

 

●ストライキを回避して出社した組合員に対し

不就労扱いにして賃金も減額

 労働組合は熟慮のうえ、ストライキを回避することを会社に通告しました。ところが会社はストライキ中止は認めないとして、組合員を不就労扱いにし賃金も減額してきました。

 そもそもストライキがおこなわれなかった際に、その組合員の就労を拒否することは使用者が就労を拒絶したこととなります。それが労働組合を嫌悪してのものであるなら、不当労働行為となります。

 会社は労働組合がストライキを通告したこにより、教習生に対し予約をキャンセルしてもらうよう連絡していますが、これは会社によるリスク回避の判断であり、ストライキを回避した組合員を就労させないこととは別問題なはずであり、合理的な理由となり得ません。たとえ教習生がこない状況であったとしても、他の業務に就かせることも可能なはすです。就かせる業務がなくても、会社に賃金を支払う負担が生じるものの、これは既述したとおり会社のリスク回避の手段であり、賃金支払いはリスク回避の経費といえます。ましてや労働者にリスク回避の負担を負わせるべきではありません。

 もし会社のこのような措置が許されてしまえば、労働組合がストライキを通告したらその日は就労が不能な状態にし賃金カットするという、ストライキへの対抗措置、報復行為を認めてしまうことになります。そうなれば労働組合のストライキを委縮させることとなり、労働組合活動への不当な干渉となります。

●一時金について組合と交渉中であるにもかかわらず、

組合員以外の従業員に対し一時金を支給したうえ、

組合員に対しては個別に承諾を求める

 一時金についての労使交渉が、会社の不誠実な対応もあり難航するもと、労働組合はやむなく神奈川県労働委員会にあっせんを申請しました。これにより交渉がさらに長引き、夏季一時金の支給が遅れてしまうことも明らかとなりました。

 この状況をうけ会社は、会社の提示する金額でよければ組合との確認を待たずに一時金を支払うという旨の文書を掲示しました。確かに従業員のなかには、ローンなどを抱えている者も少なくなく、一時金の支給が遅れてしまうことは切実な問題です。こうした従業員に対する配慮は必要であることから、会社の何らかの措置は否定するものではありません。よって、当座は仮払いとして一定額を支給したうえ、組合との確認ができしだい正式に支給するといったことで対処することはあり得ることです。

 しかし会社は、この組合との確認前に支給する一時金は、仮払いではなく確定したものだとしたのです。そして支給を希望するものは、組合員も含めて会社の提示額を承諾する「承諾書」を提出させることまでしました。しかも冒頭に記した神奈川県労働委員会での、あっせんがまだ始まっていないにも関わらずです。

 会社のこのような行為は、あっせんで会社と組合が一時金の額について折り合いがつく前に、事実上、一時金の額を決めてしまおうというものです。これでは、いくら組合が団体交渉をおこなおうが意味がなくなってしまうことは明らかです。しかも組合員も含めて会社の提示額の承諾を求めていることから、組合への支配介入にもあたります。

 このような組合との団体交渉やあっせんを軽視し組合活動に介入する行為は不当労働行為です。